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【浪華の火の玉小僧!鳥居堂三郎誕生】#03 |
――あらすじ―― 三郎がもぐらだと思って叩いたのは人だった! 土から出てきた子供は、三郎が思いっきり殴ったせいか、どうにも肌色が悪く、緑に変色していた。 三郎には医学などの知識が特にあるわけではなかったが、 緑に変色するということがどんなに異常な事かはすぐさま理解した。 三郎はその子供を土からひっぱり出すと、すぐさま背負って家へと向かった。 誰も人がいないことを確認しながら、裏口から蔵の隙間を通り抜け、なんとか誰にも気付かれずに自分の寝室に到着した。 とりあえず布団を敷き、そこへ寝かせ、水を汲んだ桶と手拭いを持ってきて、 たんこぶの出来た部分を冷やしてやった。 火の一族が思いっきり殴ったのだから、これはもう腹をくくるしかないか? モグラを叩くつもりだったにしてももう少し加減するべきだったか…などと考えを巡らせていた所、 気がつくと殴った子供はもう起き上がり、辺りの様子を伺っていた。 「…ここは …一体?」 「おっ! 目覚めたか! 良かった〜! ここはオイラんちだよ!」 「…君は誰ですか?」 「オイラ三郎!!」 「…三郎殿か…なぜ三郎殿の家に…」 「お…おめえ、あ〜あの、アレだ、道端でぶっ倒れて…そう、ぶっ倒れてたんだぜ? だから家まで運んでやったんだ」 「…そうか…それはかたじけない…まだまだ調整が必要ですね」 殴った人物は懐から巻物と筆を取り出すと、何かぶつぶつと書き留めていた。 「脱出の際に不具合…気を失うほどの衝撃アリ…と。うぅ…頭が何かに殴られたかのようだ」 「はは…何だか知んねぇけど大変だったな」 殴った張本人である三郎は、苦笑いするしかなかった。 「…さてと…ここはどこの国でしょうか?」 「ここは浪華の国。鳥居町だよ」 「…ふむ…目的地は合っていますね」 「おめえどっから何しに来たんだ? 見かけない顔だけど」 「…ん…ちょっと勉強と試作試験に。土の下から」 「土の下? へー! 色んなのがいるもんだなぁ〜人魚や鬼は聞いたことあるけどなぁ」 確かに土の中から出てきた所を見ていた三郎には、特に疑う余地は無かった。 それに緑の肌に細長い頭、若いにしても非常に小柄な体形…初めて会う人種に三郎の目が輝きだす。 「なぁ! オイラの友達になんねぇか?」 「…友達? ふ〜ん…まぁいいですよ」 「名前は何てんだ?」 「…申し遅れました。私はキラリンと申す」 「じゃあキラリン! 一緒に遊ぼうよ」 「…遊ぶ…何をして?」 三郎は色々考えたが、自分と同じ程度の背丈のキラリンなら勝てると踏んで、 剣術試合を申し込んだ。 「じゃあウチに道場があるから、そこで剣術試合しよう!」 「…なるほど…剣術ですか…負けませんよ」 道場へ着くと、木刀を手に取り、三郎の掛け声で試合開始! 勝負はあっというまについた。キラリンの圧倒的勝利だった。 「うげぇ…おめえつえ〜な〜」 「…舐めないでくださいよ。国では文武共に最高成績で修了しているのですから」 騒ぎを聞きつけて母が飛び込んできた。 「ちょっとちょっと何の騒ぎだい?」 「あ、母ちゃん。新しい友達! キラリンてんだ」 「…三郎殿の母上様ですか…よろしくおねがいいたします」 「あらあら、よろしくね。…なんか顔色悪いけど大丈夫?」 「…? 至って健康だと思います」 「そう。でももう今日は帰っていただけるかしら? 三郎、キラリンさんをお帰ししたら来てちょうだい」 「え? うん、わかった。ごめんなーキラリン」 「…いえ、今日はお世話になりました。このご恩はいつか…」 「いやいや気にしないでくれよ〜ははは…。また来てくれよ!」 キラリンが帰り、居間へ行くとそこには父もいた。 なにやらいつもと雰囲気が違う事を三郎も感じ取り、すぐに兄達の隣に座った。 そして父がゆっくりと話し始めた…。 ――つづく あとがき 三郎とイヒカが初めて会って話した所。というだけの話。 所で、毎回会話の文頭に「…」がつくキラリンは、そういうキャラ付けです。 思慮深い感じとか落ち着いてる大人しい感じが出るかなとおもって。 |