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【浪華の火の玉小僧!鳥居堂三郎誕生】#10 |
――あらすじ―― キラリンの仕事場へお邪魔しにきた三郎は、 キラリンが退席中にウロウロとどこかへ行ってしまった。 キラリンと黒天王が面会を終えて、書斎へ帰ってきた。 「…さて、三郎君。 …ん? 誰もいない」 そこへ丁度ソーラも息を切らして戻ってきた。 「ハァハァ…あ! キラリン様! 三郎君どっかいっちゃったのー」 「…まったく…注意したのに…」 その時、ジリリリリ! と、金属音が鳴り響いた。 中〜遠距離通話を可能にした音声通伝機(声伝機)の呼び出し音だった。 すかさず助手のソーラが声伝機の音声送受口を取った。 「はいはーい! 機械強化研究所所長室で〜す」 「こちら境界門下階警備です! 所長のキラリン殿は居られますか!」 根の国は戦闘員の住む上階と、イヒカの民や非戦闘員の住む下階があり、 その間は四万三千枚もの特殊合板で区切られており、そこは「境界門」と呼ばれ、厳重な警備が敷かれていた。 そこの警備兵が慌てた様子で叫んでいた。 その大きい声は送受口に耳を当てていないキラリンや黒天王にも届いた。 「はーい、今代わりますねー。はい、キラリン様」 ソーラから送受口を受け取るとキラリンは答えた。 「…こちらキラリン。どうしました?」 「門前にキラリン様の助手と名乗る小僧が来ていて通せと暴れているのですが…」 キラリンは手を頭につけて一瞬ため息をついた。 「……わかった引取りに伺う。引き止めておいてください」 ここまでキラリンが伝え終えた所で、サッと黒天王が送受口を使った。 「こちら黒天王。その小僧は上階へ行きたいといっているのか?」 「こ、黒天王様!? はっ、その通りです」 「なら俺が連れて行こう。小僧にもそう伝えろ。そこに留め置け」 「はっ! 了解致しました!」 「…えぇっ? そんな…いいのですか?」 キラリンは驚いて尋ねる。 「あぁ構わん。俺と三郎は友達だ! だろ?」 そういって黒天王はニヤリと笑った。 「…それでは申し訳ありませんが、少々色々面倒を見てやってください」 「まだまだ知らない事が多いようだし、色々見せてやりたい。 でなければキラリン殿の助手は務まるまい」 ――しばらくして黒天王が境界門へ着くと、三郎と警備兵達が談笑していた。 「そんなバカな! アハハハ!」 「だろ〜だからオイラがさ〜…」 「よう! 三郎! なにやらにぎやかだな」 「はっ! これは黒天王様! お待ちしておりました!」 「おー! カラスのオッチャン!」 「いや、楽しそうな所を邪魔したかな」 「いえいえ、滅相もございません!」 「よし、三郎。上へ行くか」 「うん」 「上階の警備兵にも報告済みであります。じゃあな三郎」 「ああ! またな! …といってもどうやって先に進むんだ?」 「ここに立っていればよい」 黒天王が右手をあげると、警備兵が機械を作動させた。 すると三郎達の足元がせりあがってきた。 「お…おおお? いやいやおいおい! 天井にぶつかる! 潰れちゃうぞ!」 「大丈夫だ、落ち着け。よ〜く上を見てみろ」 三郎が上を見ると、天井の板が開き始めた。 板が開くとまた板があり、その板が開き…と、どんどんどんどん板が開き、道が出来ていき、 三郎達はその中を進んでいった。 「うわうわ…これどんだけだー」 「四万枚くらいあるらしいな〜。全部イヒカの作った特製の頑強な板だ」 「イヒカ?」 「ん? お前たちのことだろう。下の階に住んでいるキラリンたち…イヒカの民だ」 「あ? あ〜、ああ! そうだそうだそうだった! へへへ。 …あ、なんかゆっくりになってきた?」 「さぁ、もう着くぞ。着いたら…まぁそうだな。俺の隊舎へ行くか」 「あ、ホウゲキタイってとこなんだよなー?」 「おー、よく知っているな。そうだ。三郎は術はやるか?」 「いやー、オイラ術は苦手なんだよなー。うまく飛ばないっちゅーか」 「そうか? 残念だなぁ。さぁ着いた。俺がつかんで飛んで行こう」 「飛ぶ?」 ――つづく あとがき 三郎の誰とでも仲良くなれちゃう感じが出たらいいなって思いました。 「境界門」って名前ですけど、あんまり門を想像しないでください。 垂直に通った穴に、金属製の扉がいっぱいついている感じお願いします。 境界門が四万三千枚の特殊合金製の板で区切られているのは、「ヨミ(四三)」とかけて、 少なすぎず、多すぎずみたいな枚数を考えました。…多すぎる? |