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【浪華の火の玉小僧!鳥居堂三郎誕生】#11 |
――あらすじ―― 上の階層へ行きたいという三郎の希望に沿って、黒天王が上階を少しだけ見せてやることにした。 ――上昇していた床が止まると、また巨大な空間が広がっていた。 境界門の前は大きな吹き抜けになっていた。 上を見ると、ひとつ大きな光の周りに、 一瞬星のように見えた光は規則正しく並んでいて、 真っ暗な中を照らす行灯であることがわかった。 ただ、下の階とは違い、建造物がほぼ石や土をくりぬいた洞窟のような状態で、 下の階よりだいぶ原始的ではあった。 「黒天王様! お疲れ様であります!」 「うむ。ご苦労」 「お主が三郎か? イヒカが上に来たいとは珍しいな…」 出迎えた警備兵が三郎を物珍しげに見ていた。 「そうか? おぉ…ここも広いな〜…まだ地上でもないんだな」 「まだまだ地上はずっと上だ。あの一番強い光が太陽だけどな。 頼むからここで迷子にはなるなよ? ここは戦士達の住む階だから、 かなり血気盛んな危ない奴も多い。イヒカは殺されても文句は言えんくらいだ。 それに一応俺にも立場というモノがある。さあ行くか。隊舎は上の方だ」 黒天王は三郎をつかむと、背から真っ黒な翼を出し、はためかせた。 「うわーカラスのオッチャン羽があんのか! すげーすげー」 「カッカッカ…まぁどう見てもカラスなのはわかるがな。 一応その名で呼ぶのはここまでにしてもらおう。隊員の前では黒天王で頼むぞ」 「ああ、わかった!」 上を目指して羽ばたきつつ、黒天王はゆっくりと話し出す。 「しかし警備兵と、短い間にああも打ち解けるとはな…。 …雪丸もそのくらい元気があればなぁ」 「そういえば雪丸ってのに会いに来てたんだよな〜? 雪丸って誰だ?」 「俺の弟だ」 「そいつにも会いてーな! キラリンとこで何してんだ?」 「いや… ん? まだ知らんのか? キラリン殿の所で入院中だ。それでさっき会いに行ったのだぞ」 「へー。病気か? 怪我か?」 「いや、そのどちらでもない。まぁキラリン殿の助手であれば、いずれ知る事だろうが…。 雪丸はわざと改造手術に失敗させた。それで今意識不明で回復手術中…という事になっているのだ」 「わざと?」 「そうだ。雪丸は貧弱でな…戦闘員には向かんのだ。そうなると…中央に見える大きな丸い建物があるだろう?」 「うん」 「あの中に、我らの王…いや、神ともいうべきヨミというお方がおられてな…ってそれくらい知ってるよなぁ?」 「へ〜(マリ様みたいなもんかなぁ)」 「非戦闘員はヨミ様の餌になってしまうのだ…」 「喰われちまうのか! ひぇ〜」 「そこで機械強化研究所の規則に目をつけたのだ」 「キカイキョウカケンキュウジョ? なになに?」 「おいおい…お前のいる所だろうが。 機械強化研究所には”施術失敗トテ、被験者ノ命アル限リ完全復帰ヲ最終目標トス”…という規則があるのだ。 キラリン殿が作ったそうなのだがな」 「ふ〜ん…でも、失敗して死んじまったりしねーのか?」 「フフフ…そこはキラリン殿の手腕にかかればどうとでもなるわ」 「へ〜キラリンすげーんだなー」 「もちろん雪丸も了解済みだ」 「ん〜…でもそれでこの先どうすんだ?」 「…それは俺もわからん。だが…あの時はもう時間が無かったのだ」 「なんとかその…ヨミってやつの餌になるっていうのを変えないとな!」 「カッカッカ…そんなことができたらいいんだがな」 「やってみなきゃわかんねーよ!」 「そうだな…カカカ。さぁ着いたぞ」 上階へ着地し、黒天王は羽をしまった。すぐに隊舎の警備兵が駆け寄ってくる。 「黒天王様! お帰りなさいませ! 三郎様のことは伺っております! どうぞ!」 「ご苦労」 上の階といってもやはり中は洞窟だった。だが、キラリンがいたところと違い、 やはりここも土を掘っただけのような所だった。 「上のが偉そうっぽいのに、なんか作りがしょぼいなぁ」 「カカカ…あの研究所で出来た内壁製造、施工技術がまだここまで来ておらんのだ。 野郎共が無頓着というのもあるが、第一に金が無くてな…我慢してくれ」 「へ〜…ん?」 奥からぞろぞろと子供達がすごい勢いで走ってきた。みな嬉しそうに黒天王に飛びつく。 「クロ様〜! お帰り〜! 遊んでよー」 「これこれ…お客様が来ておるのだ。やめなさい」 「この人? だぁれ?」 「オイラ三郎! よろしくな〜」 「よろしく〜」 「この方はキラリン殿の新しい助手だ。三郎殿、この子たちはみな法術専門家の卵だ。 術が苦手だといってたな? ちょっと習ってみてはどうだ?」 「うぇーこんなとこまできて勉強なんてイヤだよ〜」 「三郎さん、術使えないのー?」 「使えるけど、うまくいかねーんだよな〜」 「そんなの使えるって言わないよー」 「いや、使えんだってば」 「使えるってのは自在に操ってこそさ。ほら…」 子供の一人が指先に火を灯して見せた。 「火の大きさを維持して灯し続ける…基本の基本だけどね。出来る?」 「う…いや、んなこたぁできねぇけどよ…基本、巻物が要るし」 「あー! 巻物型なんだ? …でもそれでうまく使えないって何? 技の力を注入させれば、 自動的に巻物に書き込まれている術が発動するだけだと思うんだけど。やっぱ使えないんじゃん」 「だから使えるって! じゃあいいよ! そこまで言うならオイラの術見せてやらあ! 後悔すんなよ!」 「後悔…? まぁ見せてもらおうかなー。じゃあ射撃訓練場へ案内するよ」 「オイオイ…仲良くな〜」 加熱していく子供達を黒天王がなだめるが、誰も聞く耳を持たない。 子供達はさっさと射撃訓練場へと走っていく。その後をついて三郎が、そしてその後を黒天王がついて行った。 ――つづく あとがき カラスのちょっとした事情のお話。 イヒカとカラス達(天狗)はほぼ同時に抜けたんじゃないかと私が考察の方で考えたので(「天狗が根を抜けたのはいつなのか」)、 ということはカラス・天狗とイヒカの間に、親密になる何かしらの理由があるだろうと考えて、このような設定になりました。 もちろん、このままだとカラスしか抜ける理由にならないので、いかにカラスと天狗たちの間に絆があったのかという話は、 今後描かれていくことになります。 また、カラスが法撃隊という術攻撃の専門部隊の大将ということになったのは、 ゲーム内での天狗が巻物の番人であるのみならず、術の使用にかなり秀でている様子だったので、 天狗=術の専門家=術の専門部隊だろうということからです。 カラスは火天が得意だったらしいし、悪くはないかと思います。 カラスの笑い方が「カカカorカッカッカ」なのは、「カラス(烏)=カァカァ」あたりから取った感じです。 設定画の大笑いしてるあの笑顔サイコーです。 |