天外魔境II図解台詞集特集
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【浪華の火の玉小僧!鳥居堂三郎誕生】#12

 ――あらすじ――
 法撃隊の隊舎についた三郎は、子供たちと術が使える使えないで口論に。 三郎は術が使える事を証明すべく、射撃訓練場へと向かった。


 「はーい、ここが射撃訓練場となりまーす」

 「お〜! ここはキラリンとこと一緒だ!」

 「ここはかなり強力な術も使ったり試射なども頻繁にやるからな。特別金をかけて整備してあるんだ」

 室内はキラリンたちのいた階層のように金属製の板で内装され堅固な作りになっていた。 部屋に入ると少し入った所に、横に長い台があり、大人が両手を広げたくらいの間隔で板で仕切られて、 半個室のような状態になっている。 部屋は奥に細長く、ずっと奥の緑色の壁に様々な的が描かれていた。 台は三郎の背より高かった。

 「今、踏み台を持ってくるから」

 「いや! 大丈夫。台に乗っちまうから」

 三郎は台に飛び乗り、奥の的を確認する。

 「ここから的を狙うんだな?」

 「そう」

 「ちょっと狭いけど大丈夫かな…」

 「え? そんなに狭いかな…? あ、巻物は持ってる?」

 「そういえば持ってねーや」

 すると子供の一人が射撃訓練場の書庫から、巻物を一本持って出てきた。

 「鬼火でどう? 一番初歩で簡単なはずだけど」

 「ああ、それなら使った事ある! それでいいよ」

 子供が巻物を投げ、三郎が受け取った。

 「見てろよ〜」

 鬼火の巻物を受け取り、三郎はすぐに集中しはじめた。
 とりあえずひと段落したとみて、黒天王は子供達に注意していた。

 「いいか? お前たち。 三郎殿はまだ小さいとはいえ客人だぞ? それも俺の客人だ。それを挑発するような真似を…」

 その時、黒天王は異変に気付いた。背後からの凄まじい圧力だった。 まるで山ひとつを背負わされたかのような巨大な圧力に、 黒天王は身動きを封じられ、容易に後ろを振り向く事さえ出来なかった。

 「(なんだ…これは…後ろには三郎殿しかいないはず…?)」

 今まで叱っていた子供たちも、黒天王の背後を見て顔が引きつっている。
 黒天王が気合いと共に、石のようになった体をなんとか動かし、振り返った。 そこには台の上で巻物を手に集中する三郎と、 その三郎の眼前に、大人一人がすっぽり中に入るくらい巨大な火の球が浮かんでいた。

 「馬鹿な…」

 鬼火といえばせいぜい二〜三個の人の頭程度の火の球が前方へ飛ぶくらいの術である。 三郎の目の前にある火の玉は、鬼火の上位術である火天どころではなかった。 だが鬼火の巻物にそんなものを制御する法印が組まれているはずがない。 一体なぜ? どうして? 様々な疑問が頭をよぎったが、更に増大していく火の玉を見て黒天王は我に返った。

 「(まずい…このままでは危ないぞ)オイ! オイ! 三郎! ちょっと止めろ! 三郎!」

 だが三郎は集中しているのと、ごうごうと燃え盛る炎の音で聞こえない様子。 火球はさらに大きさを増し、今更止められそうにもなかった。
 黒天王は危険を感じ取り、子供達の方を見る。

 「お前達……逃げ…(いや、子供が動けるわけがないか…全員を外へ出す時間も無さそうだ) いや、ここを動くな! 俺の影に居ろよ!」

 子供達は必死に、なんとかうなづくような素振りを見せた。

 「(こんなことならもっとちゃんと訓練しておくんだった…)結界の術!」

 黒天王の周囲が赤い光でぼんやりと包み込まれた。

 「(まぁ無いよりマシか…)伏せろ!」

 子供達を体と翼で覆い隠す。
 そんな状態を知らない三郎は…

 「…さぁ〜今日はなかなか調子がいいぞー! 見てろ…! 鬼火ぃぃいい!!」

 三郎が叫んだ声が聞こえるか聞こえないかの瞬間、部屋は光と爆音に包まれた…。


 ――つづく
あとがき

 三郎の秘めたる力を解放します。