天外魔境II図解台詞集特集
掲示板|辞典年表考察小話リンク

特集 > 【画像の話】

■天外魔境IIの画像に関して色々書いてみる。

データ上の画像と実際に見える画像の違い
基本的に”見えない”とされていた範囲
雑魚戦闘の背景
この絵、欠けてない?
ドットの目立つ絵は意図した物

【データ上の画像と実際に見える画像の違い】
 PCエンジンゲームのサイトにあるゲーム画面の画像を見ていて、こう思った事は無いだろうか?

「……このキャラこんなにほっそりしてたっけ?」

私は思いました。なんか違くない? と。 おそらくエミュレータのスクリーンショットだろうと思った私は、 エミュレータが完全じゃないせいなのかなぁなどと思っていた時期もあった。 しかしここですぐ結論!

結論「ブラウン管は1ドットが横長だった」

 その昔、モニターといえばブラウン管しか無かった。 そしてそのブラウン管は1ドットが横長だった(らしい)。 そんなブラウン管に表示される前提で作られている画像は、 ちょっぴり縦長に描かれているのである。 というよりも、製作環境もブラウン管だったからかもしれない。
 具体的な数字で言うと、PCエンジンでよく使われている画面モードの横幅256ドットを 299ドットほどに拡大する(大体1.16796875倍)と、ブラウン管で見えていたような画像になる。
オープニング:宇宙のマリとヨミ 256x240  オープニングの一場面。マリとヨミが少し縦長の楕円なのがわかるだろうか。
オープニング:宇宙のマリとヨミ 299x240  同じ場面の横幅を299に拡大した画像。 マリとヨミがちゃんとまん丸になっている。 これが当時我々が見ていたものに近い。
 このあたりのことがよくわかっていなかった私は、当初画像のサイズに混乱していた。 現在ではマップ系の画像以外のゲーム画面関連は特に注釈が無い限りは大体256→299にした状態で表示しているはずです。

【基本的に”見えない”とされていた範囲】
 ブラウン管には内部的に表示されるとしていながら、 物理的にはほぼ表示されない部分があった。 そんなブラウン管に表示する前提だった時代では

上8ドット、下8ドットは表示されない範囲

として画面がデザインされていた。 そのため、現代の高精細でデータ通りにバッチリ映せるモニターで表示すると、 バグか何かのように見えてしまう場面がいくつかある。 だが、それは別にバグでも手抜きでもない。 見えないはずの部分に労力を割くなんて力の無駄なのである。
会話シーン  とある会話シーン。 村人のメッセージウィンドウが、一番下より8ドット上に表示されているのがわかる。
 このウィンドウを一番下に置いてしまうと、ウィンドウが途切れて表示されてしまい、 とても見栄えが悪くなる。
海牛法師登場シーン  海牛法師の登場シーンの左上に黒い四角が。これがあるのはワダツミ五人衆の中でも 海牛法師だけなので、プログラムや演出上意味のあるものとは考えにくい。 当時デバッグもブラウン管だったせいで見落とされたのだろう。
地獄城入城シーン  地獄城に入った時に出るお城ドアップ絵。一番上8ドットが黄土色一色。 幻夢城も同様で、他には鬼骨城、密林城は黒一色。砂神城が茶色一色。
 魔海城、白銀城は塗りつぶしでも違和感の無い構図になっている。
 この上下8ドットは、PCエンジンミニではどうやら表示しないようである。 ちゃんと描いてあるシーンの方が多いのに、なんだか勿体ない事である。

【雑魚戦闘の背景】
 少なくとも私はスクリーンショットを撮るまで気付かなかったのだが、 雑魚戦闘の黒い空間〜緑色の地面のグラデーションは動いている。 緑色の部分、最上部の二色が約60fps(1秒間に60回)の速度で2ドット上下している。 これを低速でわかりやすくした画像がこちら
 ↓
雑魚戦闘シーン
 これが一体何なのかは正直な所、製作者に聞かなければわからないが、 私の予想では残像を用いた目の錯覚で中間色を表現して 緑のグラデーションを増やす目的ではないかと思う。 それを表現した画像がこちら
 ↓
雑魚戦闘シーン
 というわけで、普通にスクリーンショットを撮ると、 緑色の部分が高かったり低かったりしてしまい、 おそらく製作者の意図した通りの背景にはならない。 なので、このサイトの敵の画像の背景はほぼすべて下の画像と同様に加工してある。 全ての敵のスクリーンショットを撮り直して、敵だけ切り抜いて、 加工した背景と合成して……めちゃくちゃ大変でした。

【この絵、欠けてない?】
 特集の中でやっている「修復写真館」では、チマチマとドット打ちをする必要性があり、 かなり人よりも天外IIのドット絵と向き合ってきたと思う。 そんな中でも特に「千年前の根の一族」に関して、 他の画像にはない妙な特徴が散見されることに気付いた。 なお、この項目では画像の横幅を拡大しない。まずは元の画像とそのカラー版を見てみよう。
千年前の根の一族、元画像千年前の根の一族、カラー画像
 目ざとい人ならカラー版を見れば気付くかもしれない。 特に赤い暗黒ランの茎の下の方に欠けたような部分があるのがわかりやすいのではないだろうか。 次に欠けたように見える部分を拡大して明示する。
千年前の根の一族、カラー欠け明示画像
 カラー版背景は私が出雲大社の画像を元に描き足したものだったので、それを適当に一色にし、 欠け疑惑箇所に8x8の白い枠を表示した。 ただし、この画像自体は倍に拡大したものなので、16x16になっている。
 ゲームにおける画像の最小単位は基本的に8x8で、 その8x8の画像を順番に並べて大きな絵を表現している。 だから欠けているであろう部分が8x8で欠けているのである。

<私が”欠けている”とする根拠>
 絵を描くにあたっては、明確なルールが必要になる。 「設計図」「仕様」「指定」「設定」など、言い方は色々あって、 天外IIの製作現場で何と言っていたのかは私の知る所ではないが、 これは多くの人で一つの作品を作るために必要なもので、 これがなければ場面ごとに絵が変わってしまい、統一感が無くなってしまう。
 それを私が知っているわけではないが、天外IIの絵を見ているとわかるルールが一つある。 「キャラクターには濃い色の輪郭線を描く」というものだ。 これら欠けているとする部分は、そのルールから逸脱している。 輪郭線が無くなっていて、突然色が途切れているのである。
 赤い暗黒ランは特に顕著だと思うので、もっと拡大してみたい。
赤い暗黒ラン検証画像
 青い罫線は8x8ドットの場所であり、そこで色が途切れているのがわかると思う。 右上に「元」と書いてあるのが元の画像で、「描足」と書いてあるのが、 私が「本来ならこうじゃないとおかしいはず」として描き足した画像です。

<なんでこうなったのか?>
・圧縮で消えちゃった説
 メモリが増えたSUPER CD-ROM2といえど、画像の圧縮は必須だったので、 圧縮をかけたらプログラムが「ここは要らないね」と判断して消されてしまったとする説。

・凡ミス説
 当時どのようにドット打ちをしていたのか知らないのだが、 「元の絵を描く→スキャンする→ドットにする」くらいの作業ではないかと思う。 ……調べたら当時スキャナーがあったかどうか怪しいので、 もしかしたら元の絵の上にドット方眼紙を当てて、ドット絵にして、 それをさらにPCで手作業でチマチマと打っていたという可能性もある。 そんな作業の中で、あまりにも打つドットが少ないために見逃してしまった……とする説。

・仕方なく削った説
 圧縮で消えちゃった説に近いが、こちらは人力で仕方なく削ったとする説。 「とにかくデータが入らない。どっか削ってくれ」と言われたドッターが 「ここなら削ってもまぁ大丈夫かな」と消していったとする説。

 個人的には「圧縮で消えちゃった説」が濃厚かなと。 消し方が実に巧みで、機械的な仕分けに感じられる。実際の所はわからないが。 ただ、似ている「千年前の戦争シーン」では2箇所くらいしか欠けたような部分が見当たらず、 このシーンだけこんなに大量に見つかったのである。 「千年前の戦争シーン」よりも先に出る画像なので、こっちを先に削っていき、 「もう削れないから次のとこ削ろう」となって「千年前の戦争シーン」をちょっと削った所で 「もう大丈夫」となったのかもしれない。とするとやはり人力圧縮なのだろうか?

<ついでに>
千年前の戦争シーン、カラー欠け明示画像
 千年前の戦争シーンの欠けてるであろう部分。とても少ない。